第2回東京グリーンカップ争奪学童軟式野球3年生大会が5月21日、目黒砧グラウンドで開幕。オープニングゲームの2チーム参加による開会式と、1回戦2試合が行われた。大会はトーナメントで、共催する目黒区少年軟式野球連盟の9チームのほか、8区1市から11チームが参加。決勝は6月25日を予定している。
ルールで禁じるまでもなく
新型コロナウイルスが、季節性のインフルエンザウイルスなどと同じ扱いの5類感染症に移行されて2週間弱。多くがまだ10歳に満たない少年・少女たちの本気のプレーや笑顔が、東京のグラウンドにも戻ってきた。
「グリーンカップ」の始まりは滋賀県。多賀少年野球クラブの辻正人監督が「なかなか日の当たらない3年生にスポットを充ててあげたい」と、2005年から毎年主催。数年前から大人の罵声・怒声を禁じると、スマイルの花が咲くようになって人気も飛び火。大会趣旨に則った「グリーンカップ」が県外の各地に広がりを見せている。
開幕ゲームに挑む2チームが開会式に参加
東京では2020年の2月に初開催も、以降はコロナ禍もあって延期が相次いだ。第2回大会の実現にあたった事務局の深井利彦さん(目黒区少年野球連盟理事長)は、都内でも選手が激減していることを実感したという。
「野球をする子供が本当に減っちゃってますね。われわれの目黒区でも14チームのうち、3年生以下で試合ができるチームが9。区外の友好チームなどにも声を掛けても、『(人数不足で)単独では出られない』という返事がたくさんありました」
ただし、4年生以下の大会は都下でも複数ある中で、3年生以下の大会は希少であり、東京グリーンカップが目標や希望となるケースもあるだろう。また、怒声のない大会は見守る保護者や指導者までも笑顔にしてくれることは、近年のグリーンカップで裏付けられている。
「今の時代に怒声や罵声をなくそうっていうルール自体が、ちょっとおかしいのかなという感じもしますよね。そういうのはないのが当たり前ですから。もちろん、野球のルールやマナーはきちっとした上ですけど、試合を見ている親御さん(保護者)が楽しくなる感じでないと。少年野球は親御さんがいないと成り立たないですからね」(深井さん)
■北原15ー1ジュニア
ジュニアファイターズは1回表、一番・下津成大(上)の内野安打から1点を先取。その裏には右翼手の二村隆介(下)が前進守備からライトゴロを決めてみせた
オープニングゲームは、地元・目黒区のジュニアファイターズが先制し、ベンチも保護者らも大いに盛り上がった。以降は北原少年野球クラブ(練馬区)が攻守で圧倒し、毎回5得点(※5得点で攻守交替)の3回コールドで決着した。
北原少年野球クラブは、監督と選手が4年生から繰り上がる。昨年は6年生を率いた細田健一監督が今年は4年生チームに
3年生以下は基礎練習が8割で、「捕る・投げる」は大人がほぼマンツーマンで教えているという北原の選手たちは、どんなにリードを広げてもストライクは積極的に振り、走者は抜かりなく進塁した。手を抜いたり、相手を侮辱するような言動がまるでなかったのも印象的で、指導歴14年で新年度から4年生以下を受け持つ細田健一監督は、そうした心の育成にも力を注いでいるという。
「たとえ50対0で勝とうが、『北原とまた試合をしたい!試合をしてほしい!』と言われるようなチームになりたいんですね。それを私は言い続けてますし、コーチも保護者も、マナーを含めて大切にやってきています」
北原は先発・堀川怜志(上)が安定した制球でゲームをつくった。3回裏、佐藤滉がイニング5得目となる本塁打(下)を放って試合は終了
■有馬・トゥ13ー8東山
有馬スワローズ(中央区)・トゥールスジュニア(荒川区)と、東山エイターズ(目黒区)の第2試合は、初回に3点ずつを奪い、2回はともに0点という好ゲームに。4回表に有馬が8点差として勝負を決めたが、その裏、東山も粘り強い攻撃で5点を奪い、13対8で決着した。
友好関係にある、中央区の有馬スワローズ(選手5人)と荒川区のトゥールスジュニア(選手9人)が唯一の合同チームとして参戦(上)。先発の吉井海翔(下)は、真上から投げ下ろすボールに力があった
「バットの芯にボールを当てるだけだから、何も難しくない!」「ベルトのところに来たら振ればいい!」など、具体的な声掛けで緊張気味の選手たちの背中を押していたのは、トゥールスジュニアの大串善則監督だった。
「昔は高学年の監督もやっていたんですけど、シンプルに言ってあげるのが良いと思うんですよね。あとはそれをどう変換していくか、というのが子供たちは楽しいところだと思うので」
振り逃げを知らずに走らなかったり、チーム内の走塁ルールを覚えていなかっいたり。そういう場面でも声を荒げるのではなく、あとから確認したり、コーチ陣で教える姿も印象的だった。ただし、グリーンカップだから、そういうリアクションをしたわけではないという。
「5年前に中学チームの指導から戻ってきてからですね。世代が変わって自分の息子もいなくなった中で、他人様からお子さんを預かる場合に、どうやって言葉で伝えるかということを改めて考え直しまして。言葉遣いもちょっと気をつけているつもりです」(大串監督)
大会は今後も日曜日を中心に試合を消化し、遅くても7月には優勝チームが決まる運び。第1回大会は文京区のレッドサンズが優勝している。
(大久保克哉)